活動方針

活動方針

 わが国においては基本的人権の尊重を基本原理の一つとする日本国憲法の下での推進が図られています。わが福祉部は福祉活動を推進していく上で障害者、子ども、高齢者、女性、外国人等に対する人権問題は重要課題となります。下記に掲げる課題をより積極的に取組み人権教育・啓発に関してはこれまで以上に力を注いでいきます。

1. 障害者

障害者基本法第3条2項は、「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」と規定されていますが、現実には障害がある人々は様々な物理的又は社会的障壁のために不利益を被る事が多く、その自立と社会参加が阻まれている状況にあります。

2. 子ども

子どもの人権の尊重とその心身にわたる福祉の保障及び増進などに関しては、既に日本国憲法を始め児童福祉法や児童憲章、教育基本法などにおいて、その基本原理ないし理念が示され、また国際的にも児童の権利に関する条約等において権利保障の基準が明らかにされ、「児童の最善の利益」の考慮など各種の権利が宣言されています。しかし、子どもを取り巻く環境はわが国においても懸念すべき状況にあり、少年犯罪が年々低年齢化しているとともに様々な犯罪に関与している事も多く、近年では振り込め詐欺の手先となって現金を取りに行くなどの犯罪や薬物使用による犯罪も多発しています。また学校においては不登校の問題が依然として憂慮すべき状況にあると思います。

3. 高齢者

人口の高齢化は世界的な規模で進んでいます。わが国においては、2036年には3人に1人が65才以上という超高齢化社会が到来すると予測されていますが、これは世界に類を見ない高齢化であることから、喫緊の課題となっています。

4. 女性

日本国憲法や世界人権宣言は男女の同権・平等を定め、「女子差別撤廃条約」は社会の様々な場面における女性差別の禁止を求めています。また、「男女雇用機会均等法」、「男女共同参画社会基本法」など、男女平等や女性の地位向上のための様々な法律が整備されています。長年の取組みにより、男女平等参画は着実に前進してきましたが、今なお、積極的に取組むべき課題や、社会情勢の変化等により生じた新たな課題等への対応が求められています。例えば、雇用の分野においては、管理職に占める女性割合が少ないことや男女間の賃金格差など、男女平等参画が十分とはいえない状況があります。また、セクシュアル・ハラスメントや配偶者等からの暴力(身体への暴力だけでなく、精神的暴力や性的暴力も含む。)、ストーカー行為など、犯罪となる行為をも含む人権侵害も生じており、「配偶者暴力防止法」、「ストーカー規制法」等の法律が整備されているものの課題が多いのも現実です。

5. 同和問題

同和問題(部落問題)とは、封建時代の身分制度や歴史的、社会的に形成された人々の意識に起因する差別が、様々なかたちで現れている我が国固有の重大な人権問題です。現在もなお、同和地区(被差別部落)の出身という理由で様々な差別を受け、基本的人権を侵害されている人々が存在し、これまで、問題解決のため国や地方自治体は様々な取組みを行ってきたが、依然として、公共施設等に差別落書きや貼り紙をする、インターネット上に悪質な書き込みをする、就職差別や結婚差別、土地差別につながるおそれのある身元調査・土地調査等を行うといった事例が起きています。
同和問題に関する差別意識の解消に向けて、国民一人一人の同和問題についての理解と認識が深まるよう、様々な啓発や相談に取組んでいくとともに、学校教育及び社会教育を通じて、同和問題の解決に向けた取組みを推進していく必要があると思われます。

6. アイヌの人々

北海道を中心とした地域に古くから住んでいたアイヌの人々は、自然の豊かな恵みを受け、独自の生活と文化を築き上げてきました。しかし、近世以降のいわゆる同化政策等により、その生活様式や文化を維持・伝承することが困難になった現状があります。
私たち一人一人が、アイヌの歴史や伝統、文化等について正しく理解することが、差別や偏見をなくすことに繋がります。アイヌの人々に対する理解と認識を深めるとともに、偏見や差別の解消を目指して、アイヌの歴史や文化の啓発に努め、相談等も行っていきます。また、学校教育においても、アイヌの人々の歴史や文化について理解を深める教育を推進していく必要があります。

7. ハラスメント

ハラスメントは「嫌がらせ、いじめ」を意味し、職場など様々な場面での、相手を不快にさせる、尊厳を傷つける、不利益を与えるといった発言や行動が問題となっています。
ハラスメントの形態は多岐に及んでおり、対応する相談機関も異なっています。そのため、様々な機関が設置している相談窓口の周知を図っています。
こうしたハラスメントに対しては組織で取組むことが大切であり、企業等に対し、職場での相談窓口の設置や研修を行うなど、職場での取組みを促し進めていきます。

8. インターネットによる人権侵害

インターネットの利便性や情報が瞬時かつ広範に伝わるといったメディアの特性、情報発信の容易さ、匿名性等から、インターネット上でのプライバシーの侵害や名誉毀損等の人権侵害が頻繁に発生し、社会的に大きな影響を及ぼしています。
個人、行政、企業等を問わず、インターネットの利用に当たっては、利便性を享受するだけではなく、他者の人権への配慮に心がけること、適切な情報セキュリティ対策をとること、ルールやマナーを守ること等について啓発していきます。学校教育においては、インターネットの適切な利用や、情報の収集・発信における個人の責任やモラルについて理解させるとともに、有害情報から子供を守るため学校非公式サイト等の監視等を行い、啓発・指導の充実を図ります。
また、青少年のインターネットや携帯電話のトラブルに対応するために、青少年向けの相談窓口の設置やインターネットの利用に関する啓発を実施していきます。こうした取組みを引き続き実施していくとともに、インターネットによる人権侵害を受けた人を救済するために、法務省の人権擁護機関や警察と堅密な連携を行っていきます。

9. HIV感染者・ハンセン病患者等

HIV感染・エイズやハンセン病等をはじめとする感染症は、その病気に対する正しい知識や理解が十分でないために、患者や感染者、更に家族が差別されることがあります。これらの人権侵害をなくすためには、感染症に対する正しい知識と理解を深めることや感染者・患者のプライバシーに配慮することが必要です。
区市町村や民間団体とも連携し、相談対応や無料でのHIV検査の実施やハンセン病に対する理解を深めて、差別や偏見をなくすための啓発等の支援体制の充実を図っていきます。

10. 犯罪被害者やその家族

殺人、暴行、傷害、性犯罪、交通犯罪等による被害に遭うと、身体を傷つけられ、生命を奪われる等の身体的被害のみならず、生計者を失うことにより収入が途絶え経済的に困窮するといった財産的被害、さらには、メディアの過剰取材や周囲の人々の心ないうわさや中傷・偏見により精神的苦痛を受けます。犯罪後に生じるこうした被害を二次的被害と言います。犯罪被害者やその家族は、長期にわたり二次的被害にも苦しみ、その日常生活は一変してしまいます。
民間団体、警察、医療機関等の連携による支援の取組みを推進していくと共に被害者及びその家族の立場に立って考え、支援することの大切さについて啓発を行っていきます。

11. 北朝鮮による拉致問題

都民一人一人が拉致問題を自分自身の問題として考え、行動することが、政府を後押しし、それが問題解決に向けた大きな力になることから、拉致問題等についての正しい知識の普及を図り、都民の関心と認識を深めるための取組みを積極的に推進していきます。また、学校教育においては、拉致問題等に対する理解を深めるための取組みを推進していきます。

12. 災害に伴う人権問題

平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方を中心とした東日本に甚大な被害をもたらしました。現在も、多くの人々が避難生活を余儀なくされた。避難所等では、プライバシーの確保のほか、女性や高齢者等への配慮が必要であることが改めて認識されました。また、地震と津波に伴い発生した福島第一原子力発電所事故により避難された人々に対し、風評に基づく心無い嫌がらせ等も発生しました。
災害は多くの人命を危険にさらし、被災者の生活や働く場等を奪います。被災者は大きな被害を受けており、こうした災害に伴って生起する様々な人権課題に対処することが求められます。東京都は、福島第一原子力発電所事故に伴う人権侵害について人権メッセージを発災後まもなく公表しました。今後も自治体と連携し被災地のニーズを踏まえ、様々な支援を行っていきます。

13. 性同一性障害者

性同一性障害とは、生物学的な性(からだの性)と性の自己意識(こころの性)が一致しないため、社会生活に支障がある状態を言い、国際疾病分類では疾病として認められているが、社会では十分認識されていません。性同一性障害の人々は社会の中で偏見の目で見られ、差別的な扱いを受けることがあります。
性同一性障害であるために、学齢期にいじめに遭い、不登校になったり、性同一性障害であることを家族や友人に言えずに悩み、自殺まで考える人がいるという調査結果もあります。
近年では、偏見や嫌がらせ、雇用における制限や差別等の社会生活上の制約を解消していこうという観点からの問題提起や制度の整備が行われてきました。
正しい知識の普及や、偏見や差別の解消を目指した啓発に取組むとともに、相談に応じれるように進めていきます。

14. 性的指向

異性愛者以外の性的指向を持つ人々は、少数派であるために正常と思われず、興味本位で見られるなど、偏見や差別を形作る原因になっています。日常生活にある、こうした偏見や差別により、社会生活の様々な面で、人権に関わる問題も発生しています。
性についての多様性があることへの理解を深め、性的指向の異なる人たちへの差別と偏見をなくし、全ての人々の人権が尊重される社会であることが必要です。偏見や差別の解消を目指した啓発に取組むとともに、相談に応じれるように進めていきます。

15. 路上生活者

路上生活者(ホームレス)は、健康で文化的な生活を送ることができていません。国は、平成 14(2002)年に「ホームレス自立支援法」を制定し、国や地方公共団体の責務として、ホームレスの自立等を支援するため、福祉、就労、住居、保健、医療等の分野において総合的な取組みを行うとともに、ホームレスの人権擁護について啓発を行うことを定めています。
しかし、路上生活者は高齢化や路上生活期間の長期化が進んでおり、心身の健康に不調を来すなど、厳しい生活を送っています。一方、道路や公園等の公共空間で生活することによって、都民の自由な通行や利用の妨げとなるなど、地域住民とのあつれきも生じています。また、偏見や差別意識等からホームレスが襲われる事件や嫌がらせ等も発生しています。
今後も、自治体と連携して生活の安定に向けた総合的な対策の推進に取組んでいきます。
また、ホームレスに対する偏見や差別をなくし、ホームレスの置かれている状況や自立支援の必要性について都民の理解を促進するため、啓発等を行っていくように進めていきます。

16. 外国人

都民のおよそ30人に1人が外国人です。観光や仕事で訪れる人を含め、多くの外国人が東京には集まっているが、言語、文化、宗教、生活習慣等の違いやこれらへの無理解から、外国人に対する差別や偏見が見られます。
さらに、言葉や文化、生活習慣等の違いから、外国人が日常生活に支障を来したり、外国人と日本人の間に誤解やトラブルが生じるといった問題もあります。
我が国は、「人種差別撤廃条約」を締結しています。人種、皮膚の色、民族等の違いによるあらゆる差別をなくすための取組みが必要と思われます。

17. 個人事業主・中小のオーナー経営者

昨今の情勢により、わが福祉支部は個人事業主・中小のオーナー経営者に対して、困り事、経済活動支援、社会的立場、雇用維持(社会保険・年金)、倒産後のリスタートを積極的に支援すべく進めています。

18. ペット福祉

ペットは、家族の一員として私たちの生活に欠かせない存在となっています。ペット福祉は、動物たちが健康で幸福な生活を送ることを確保し、さらにその権利を保護するための取組みを指します。 ペットを取り巻く環境には多くの課題が存在します。ペットの遺棄や虐待、劣悪な環境での飼育が問題視されており、これらは社会的な問題として認識されています。 また、近年では高齢化社会の進行に伴い、飼い主が高齢となり、ペットの世話が困難になる事例も増えています。このような場合、ペットのケアや引き取り手を探すためのサポート体制の充実が求められています。さらに、災害時におけるペットの避難や保護についても、十分な対応がなされていない地域が多く存在しており、改善が急務です。 ペット福祉の向上を目指し、動物たちが安心して生活できる社会の実現を目指して、啓発活動や支援策の充実を進めていきます。